女装子光くん(5)

「よかったらお茶でも飲まない?」
西川という男の言葉に光くんは驚きます。
(僕、ナンパされている?)
女の子として見られているだけでなく、異性から誘われている――その事実が光くんを不思議なほど高揚させます。
「これ、ナンパですか?」
思わず聞き返した光くんに、西川は一瞬目を丸くします。
(しまった……声でバレたかな?)
光くんはボイストレーニングで、いわゆる「女声」をある程度出せるようにはなっています。しかし今は緊張のせいか、かなりハスキーになってしまいました。
「まあ……そうだけど、そうストレートに聞き返されると、返事に困るね」
(良かった。バレてない)
光くんは安心するとともに、どこまで自分の女装が通用するのか試してみたいような気持ちになります。
(いざとなれば男だってバラして、帰ってくればいいか)
そう思い定めた光くんは今度は落ち着いて「いいですよ」と答えます。

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