新 白川夜話

8.3D挿絵の裏話

 最近、挿絵はポーザーを使って3Dで描くことが多い。現在会員制サイトで連載されている「王妃ソフィアの最期」 も、以前の連載時は 2Dで描いていたのだが、現在は3Dである。

 理由はいろいろあるが、大きいものの一つは制作時間が短縮できること、もう一つは3Dの表現力が上がって、非常に迫力のある画像作る ことが出来るようになったことである。

 しかし、ポーザーを使って制作すると、あまりに画像がリアルになるためか、作品のイメージを固定してしまう、またはイメージと乖離し てしまうおそれが多分にある。

「王妃ソフィア」再開が決まったとき、前回の轍(連載中断に至ったこと)は踏むまいと、3Dの挿絵制作には万全の体制で臨もうと考え た。それでヒロインのソフィアとステファニーのために新しいテクスチャを購入した。これが発売されたばかりのZetastudioの「Gaia」と 「Greta」である。

 Zetastudioのテクスチャは間違いなく世界最高の水準といって良く、かつて発売されたビクトリアやマイケル用のテクスチャは ベストセラーになっている。新製品である「Gaia」と「Greta」の出来も、サンプル画像を見る限り素晴らしく、実物と見間違うほどである。値段もク オリティに応じて高く、他のテクスチャの倍はするが。

 さらにソフィア用の髪としてNeftisの「Classic Hair 2」を購入した。ポーザー用の髪は良いものが少ないが、Neftisはほぼ髪の専業といって良く、非常にクォリティが高い。

 この「Gaia」と「Classic Hair 2」を組み合わせて作成したソフィアが次のものである。

 髪の毛の設定はブロンドであるが、キラキラした金髪ではなく落ち着いたダークブロンドである。髪と肌のテクスチャが良くマッチしてお り、ソフィアにふさわしいのではないかと思っていた。

 しかし、これがなぜか評判が良くなかったのである。

 まず、髪の毛がブロンドに見えなかったようである。作者の轡田さんから「どうして黒髪にしたのか」というクレームが来てしまった。上 に見るとおり、黒髪ではないのだが、物語が暗い場面が多いので、照明の加減でどうしても黒っぽく見えてしまう。

 さらに、テクスチャの評判も良くない。上品さ、優しさというソフィアの特質が感じられない。これではまるで(悪役の)イグアナだ。と のおしかりである。

 なぜそうなのかとよくよく考えてみた。そこで得た仮説だが、おそらく物語の情景を忠実に3Dソフトで再現すると、あまり美しい絵、美 しい表情にはならないのである。実際に人間のモデルを使って情景を再現すると、なんとなくくすんだような色合いに、沈んだ表情、暗い照明といったものがあ いまって、絵的にはあまり魅力がなくなるのではないかと思う。

 そこで、フォトレタッチソフトを使ってソフィアの髪と肌の色を明るく変えてみた。以下のものがそれである。

 髪の毛はだいぶ明るくなったが、肌の色が妙につるんとしていて不自然な気がする。やはりZetastudioのテクスチャはデフォル トの設定で使わないとその真価を発揮しないようである。そこで「美人顔」のテクスチャでは定評のある「Byte Me OK」のテクスチャを使用してみた。

 とても美人になったが、実際にはこんな女性はいないだろう、という気がする。ただ、挿絵としてはこういった典型的な美人顔の方が親し みやすいのかも知れない。そこで最近はソフィアにはこちらのバージョンを使用している。今回の更新分もそうである。過去の挿絵も新しいバージョンでいくつ か描き直しているので、お暇なら確認してみて欲しい。

 というわけで、3D挿絵というのは一筋縄ではいかない。表現がリアルになればなったで、上述の通り作品とのイメージの整合性、といっ た問題が出てくる。

 ところで、皆さんはどのバージョンのソフィアがお好みだろうか。

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