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第23話
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「子供たちの食事の用意をしてくれたんですか。どうもありがとうございます」
「あら、そんな他人行儀な。いいんですよ」
玲子さんは微笑すると、キッチンに向かいます。
「東山さんの分もすぐに用意しますね。お食事は普通で大丈夫ですか?」
「あ、構わないでください。申し訳ないです」
「いいんです。うちの子供たちの用意はして来ましたから、勝手に食べていますわ」
玲子さんはそう言うと、大人2人分の夕食を手早く用意します。妻のビデオと5枚のCDーRを見て完全に気力がなくなっている私はそれ以上何も言うことも
出来ず、玲子さんのペースに嵌まっています。
「それじゃああなたたち、自分たちの部屋に行きなさい」
「はあい」
ふだんなら食事が終わっても愚図愚図とリビングでテレビを見たりして、妻が勉強を始めるようにいってもなかなか聞かない子供たちが、玲子さんの言葉には
素直に従います。私はまた部屋の中で玲子さんと2人きりになりました。
「おビールは飲まれますか?」
「ああ……」
酒でも飲まなければ神経がもちそうにありません。私は玲子さんの問いにうなずきました。
玲子さんは微笑するとグラス2つにビールを注ぎ、自分もグラスを手にとると私のグラスにカチンと軽くぶつけます。
「乾杯」
玲子さんは私の目をじっと見つめてそういいます。
「今夜は何に乾杯なのか聞かないのね」
「……」
「もちろん東山さんと私が完全に結ばれたことによ。昨夜のことを忘れた訳じゃないでしょう?」
「やめろ」
「あら、まだ奥様に未練をもっているの?」
「どういう意味だ?」
私は玲子さんを見返します。玲子さんは挑発的な視線をじっと私に注ぎ込んでいます。
玲子さんは立ち上がると、バッグの中から紙袋を取り出しました。
「奥様のビデオテープがデッキに入ったままになっていたわよ」
「……」
「お子さんが見たら大変よ。気が付いたので回収しておいたけれど」
迂闊でした。気が動転していた私はうっかりビデオをデッキに入れてそのままにしていたようです。確かに妻がデリヘル嬢の真似事をしているようなビデオを
子供たちが見たら、大変なことになっているところでした。
それもそうですが、私は妻の痴態が収められたビデオを観ていたことを玲子さんに知られて、なぜかいたたまれない気持ちになりました。
「ありがとう……助かった」
私はようやくそれだけを言いました。
「いいのよ……でも、東山さん、最後までビデオを観たのね?」
玲子さんは囁くような声で言います。
「かわいそう……あんなに愛していた奥様に裏切られるなんて……」
「裏切る?」
「だってそうでしょう? 奥様は喜んで竹井さんとあんなプレイを……」
「悦んでいたかどうかはあれだけでは分からない。強制されていたのかもしれないじゃないか」
「まだそんなことを言っているの? CDーRの写真もご覧になったでしょう? 奥様と竹井さんの愛の記録を」
玲子さんは私に身を寄せて来ます。
「奥様は竹井さんに本気よ。もうここには帰って来ないかも知れないわね」
「紀美子は実家に帰っているだけだ」
「奥様から連絡はあったの?」
「……」
確かに妻からは一昨日の月曜に電話があって以来話していません。それも妻は自分の携帯からかけて来たため、実家にいたかどうかの証拠はないのです。玲子
さんの言う通り、実家に帰ったと偽って竹井のところにいる可能性は否定出来ません。私は日曜の午後、妻が家を出る時に見せたほっとしたような微笑を思い出
していました。あれは夫も子供も忘れて恋人と2人だけの時間を過ごせるという幸福感から出た微笑だったのでしょうか。
「日曜からだから、今日でもう4日目ね。奥様と竹井さん、誰にも邪魔されずに心行くまで愛し合っているでしょうね」
動揺している私に追い打ちをかけるように、玲子さんが話しかけます。
「そうそう、奥様は私に話していたことがあったわ。奥様が竹井さんのマンションにいる時は素っ裸か、裸エプロンか、Tバックのビキニか下着、それともいつ
かバレーボールの練習で着ていたハイレグのユニフォーム、その4通りしか許されないんだって」
「……」
「とても恥ずかしいんだけれど、その恥ずかしさがだんだん悦びになって来た、って嬉しそうに言っていたわ。その中で特に奥様のお気に入りは何だと思う?」
「……」
「それはね……裸エプロン。竹井さんが一番燃えるらしいのよ。竹井さんは奥様の大きなお尻を鷲づかみにして、バックからするのが大好きなんだって」
「……やめろ」
玲子さんが私を動揺させるために、あることないことを吹き込んでいるのだ。そう思った私はようやく制止の声を上げました。
すると玲子さんはいきなり片手を私の股間に延ばし、まさぐるようにしました。
「何をするんだ」
「堅くなっているじゃない……東山さん」
玲子さんは勝ち誇ったような笑みを浮かべます。
「奥様のエッチな話を聞いて興奮したの? 東山さんってそういう趣味があったの? 奥様が他の男に抱かれるのを想像して興奮するなんて」
私は何も言い返せません。確かに玲子さんの話から、竹井に犯されている妻を想像して不思議に興奮したのは事実です。もちろん腹立たしさもあるのですが、
それと同時に性的に刺激された自分の気持ちを説明することが出来ませんでした。
「違うわよね。東山さんはそんな変態じゃないはずだわ。私の胸を見て興奮したんでしょ?」
「……」
「ねえ、どうなの?」
「妻が寝取られるのを想像して悦ぶ男がいるはずがないだろう」
「あら、それがいるのよ。寝取られマゾとでもいうのかしら」
私は以前お話した通り、ある寝取られサイトの愛読者でしたから、もちろん世の中にそういった趣味の男がいることは良く知っています。しかし、自分はそう
ではない。少なくとも現実に自分の身にそんなことが起きれば興奮するどころではないと思っていました。
仮に今、目の前で妻が竹井に抱かれていたらどうするか。私は間違いなくこの前と同じような行動を取ると思います。竹井を殺さないまでも大怪我をさせるこ
とでしょう。そこで性的に興奮するとはあり得ないことです。
しかし玲子さんの口から語られる、私を裏切り自ら進んで竹井に抱かれていたという妻の様子を聞くと、私はなぜか興奮せずにいられないのです。
「でも、もし東山さんがそういう趣味だったとしても私は軽蔑しないわ。いえ、むしろ東山さんをより理解出来るかもしれない」
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