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第1話
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マンションに引っ越して以来、私と妻が最も親しくしている住人に玲子さんと
いう女性がいます。
元々は自治会の役員を一緒にやったのがきっかけだったのですが、玲子さんは女性ながら新しいマンションの出来たばかりの自治会の中心人物として、事務局
としての仕事以外に自治会主催の模擬店を妻と一緒に運営するなど、大活躍でした。
玲子さんは私と同い年(ですから、始めて会った時は30代半ばでした)でしたが、日頃バレーボールで鍛えているためか若々しく、またそのエネルギーには
しばしば圧倒されるほどでした。
容姿は女優さんにたとえるなら天海裕希に似た、切れ長の目が印象的な美人です。私の妻も身長は165センチとかなりの長身ですが、玲子さんはそれ以上で
168センチと、私と同い年の女性としては相当の高さです。その点も宝塚の男役を思わせます。
だからというわけではないのですが性格も男っぽく、着るものもジーパンにTシャツというスタイルが殆どです。しかしながら妻と違ってオッパイが大きく、
Tシャツの下で窮屈そうに布地を押し上げている玲子さんの胸を目にすると容姿とはアンバランスな女っぽさを感じさせ、ドキッとするほどでした。
といっても私と玲子さんの間には色っぽい話は一切なく、どちらかというと男友達のような感覚で付き合っていました。子供もわが家と同じ男2人ということ
で、共通する話題が多かったこともあります。
玲子さんのご主人はプラント関係で海外への長期出張が多く、私とはあまり顔を合わせませんでしたが、玲子さんとの夫婦仲はすこぶる良いようでした。
玲子さんの生活に激変が訪れたのはこの物語から3年前のことです。ご主人が出張先の交通事故で急死したという知らせが舞い込んだのです。すぐに子供とと
もに赴任地へ飛んだ玲子さんが、夫の遺骨とともに帰国したのはそれから一週間後のことでした。遺体は損傷が激しいということでそのまま持って帰れず、現地
で荼毘にふしたとのことでした。子供たちに最後のお別れをさせて上げることが出来たのがせめてもの慰めだと後になって玲子さんは妻に話したそうです。
葬儀にはもちろん私も出席しましたが、参列者の多さに驚きました。玲子さんのご主人もさることながら、玲子さん自身も交友関係の広さを改めて認識させら
れました。喪主として気丈に振舞っている玲子さんの姿が印象的で、またお父さん子の2人の男の子が涙をこらえている様子はこちらまでもらい泣きしそうにな
りました。
その後2年ほどは玲子さんの表情から笑いが消え(無理をした作り笑いはありましたが)、妻も随分彼女のことを心配しました。しかし1年ほど前からは徐々
に玲子さんは明るさを取り戻し、私を見かけても以前のように自分から元気そうな声をかけてくれるようになりました。
ちなみに玲子さんのご主人は十分な生命保険をかけており、しかも業務中の事故ということで会社からは相当の補償金がおりたとのことで、当面の生活に困る
ことはないようでした。しかし、玲子さんはご主人が残したお金には出来るだけ手をつけないようにしたいと、それまでのパートの仕事をフルタイムに変えまし
た。
妻が玲子さんに誘われて地域のバレーボールクラブに入るようになったのはちょうどその頃です。元々玲子さんはクラブの世話役のような立場だったのです
が、ご主人が亡くなってからしばらくはそのような気分にもなれず、活動から離れていたようです。妻がバレーボールをするのは中学校のクラブ活動以来という
ことですが、久しぶりに身体を動かす楽しさと、玲子さんの「社会復帰」の手助けになるということで、積極的に参加するようになりました。
仕事の時間も増え、バレーボールクラブに復帰したため休日は練習、これに加えて2人の男の子の子育てと玲子さんは一気に多忙になりましたが、忙しくして
いる方が亡くなったご主人のことも考えることもなく、玲子さんの生活は充実しているようでした。
玲子さんの変化に私が気が付いたのは春の終わり頃でした。私と妻が買い物に行くために駐車場に降りた時、玲子さんと出会いました。
「こんにちは、お久しぶりです」
にこやかに挨拶する玲子さんを見て私は少し驚きました。まだ肌寒さを感じる季節に、上はTシャツ一枚というのは彼女らしいと言えば言えるのですが、問題
はボトムです。その頃ようやく流行り出したばかりのローライズのジーンズで、若い娘ならともかく、玲子さんのような年齢の女性がはくのを見るのは滅多にあ
りませんでした。
いかに若々しく見えるとはいえ私と同い年ですから42歳です。Tシャツの下からチラチラと覗く肌が妙に媚めかしく、私はどぎまぎしてしまいました。いつ
もあっさり目だった化粧も心なしか濃くなっているようで、ショートの髪の色もかなり明るくなっています。元のつくりが良い玲子さんですから引き立つのです
が、私は玲子さんに妙に女を感じてしまいました。それでマンションへ向かう玲子さんの後ろ姿、特に格好の良いお尻のあたりをつい目で追ってしまいます。
「何を見とれているの、あなた」
妻は肘で私の脇腹をドンとつきました。
「い、いや……何でもないよ」
「玲子さんのお尻に見とれていたでしょう」
妻と玲子さんは親しい友人ですが、玲子さんの方が3つ年上ということもあって、妻は「玲子さん」と呼んでいます。玲子さんの方は妻のことを親しみを込め
て「紀美ちゃん」と呼んでいます。
「馬鹿いうな」
私はわざと怒ったような声を出します。
「玲子さんをそんな目で見る訳はないだろう」
まさに「そんな目」で見ていたのですが、妻はそれまでの私と玲子さんの男友達のような関係を知っているからか「そうね」とあっさり納得します。
「若い娘が着るようなジーパンをはいているからちょっと驚いただけだ。いつもと違ってお化粧の感じも随分変わっているし」
「玲子さん、彼が出来たのよ」
「何だって?」
妻の意外な発言に私は思わず聞き返します。
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