耽美画報
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地獄の美囚 

10.淫らな罠


「――ど、どうしてもそれを言わなければなりませんの?」
 涼子は切なげな目で看護婦を見つめる。その瞳は相変わらず悲痛さに満たされているが、何故かどことなく相手に対して媚びるような色が見えている。看護婦 は相変わらず無表情を崩さず、黙って首を横に振った。
 涼子はあきらめたようにうなだれるが、やがて顔を上げると美歩に向かってレッスンを再開する。
「つ、次は女の一番大事な部分の呼び名のお勉強よ、美歩ちゃん、あなたももう子供じゃないんだからわかるでしょ?」
 涼子は無理やりに口元に微笑みを浮かべ、美歩に語りかける。
(お母様……)
 常に知的美と優雅さを湛え、美歩にとっての絶対的な信頼の対象であった涼子が、A国の検査官によって衣類だけでなく女としての矜持のようなものまで、一 枚一枚無理やりにはぎ取られていくような気がした。
 涼子は次に、驚いたことに指先を下腹部から下方に這わせると、密生した漆黒の陰毛に覆われたその羞恥の箇所をはっきりと指さした。
「さ、お母様の言うとおりに繰り返すのよ。『これは私のオマンコです』」
 そこまでいうと涼子はさすがに言葉を詰まらせるが、必死で娘に動揺を悟られないように続ける。
「い、嫌……そんな……恥ずかしいわ。お母様」
 美歩は嫌々をするように首を力無く振る。
「恥ずかしがっちゃ駄目よ。さ、いって、美歩ちゃん。お願い。『これは私のオマンコです』って」
「ああ――」
 美歩は尊敬と憧れの的であった美しい母の唇から淫らな言葉が吐き出される度に、体温が徐々に上昇していくような不思議な気分になっていく。
(ああ……どうしたのかしらっ。私)
 涼子も同様に、看護婦に強制されて愛する娘に淫語を教えさせられるにつれ、不思議に身体の芯が熱くなっていくような気がしているのだ。
(へ、変だわ。どうしてこんなに身体が熱いの……)
「何をしているのっ。それは一番大事な言葉よ。しっかりと教えるのよ」
 看護婦が叱咤する声にはっと我に返った涼子は、再び美歩に向かう。
「……み、美歩ちゃん。お願い……いって頂戴」
「い、いいますわ。お母様」
 美歩は看護婦に挑戦するように、はっきりと涼子の言葉を繰り返した。
「そうじゃないわ、美歩ちゃん。お母様みたいに自分のその部分をちゃんと指さしながら言うのよ」
「わ、わかりました。お母様っ」
 美歩は母にならうように、まだ産毛のような薄い繊毛から透けて見える女の羞恥の源泉に指を這わせる。
「こ、これは、私の、オマンコです――」
「もっと大きな声でっ」
 看護婦から叱咤の声が飛ぶと、美歩はそれに反撥するように、
「これは、私の、オマンコですっ」
 とはっきりとした声音で繰り返す。
 涼子は看護婦の指図に従って大陰唇、小陰唇、尿道、クリトリスなど女の最奥の各部の呼び名を美歩に教えていく。すると美歩はまるで催眠術にでもかかった かのように涼子に言われるがまま、羞恥の単語を繰り返していく。美しい母と娘はそうやって無理やりに羞かしいことを言わされているうちに、不思議なことに 身体がさらに熱く火照ったようになっていくのだ。
 涼子は両足を限界まで開いたあられもない姿をさらしながら、豊かな腰部が独りでにもじもじと動き出すのを必死でこらえようと焦り出す。涼子の目の前で は、同じように開股の姿勢をとっている美歩までが、無意識のうちに切なげに下半身を揺らし始めているのだった。
「今度は、2人で声を揃えるのよっ。オマンコっ!」
「これは、私の、オマンコですっ!」
「クリトリスっ!」
「これは、私の、クリトリスですっ!」
 涼子と美歩は、看護婦のかけ声に合わせ、いちいち身体のその部分を指さしながら大声で唱和する。美しい日本人母娘の瞳はとろんと潤み、その滑らかな裸身 はじっとりと汗ばんでいる。
(――ふん、ようやく効いてきたわね)
 看護婦は美しい日本人母娘の肉体に訪れた異変を敏感に察知し、ほくそえむ。
 飛行機の中で涼子と美歩に対して提供された食事、飲み物一切には、例のスチュワーデスによって中毒などの影響が出ない程度の微量の麻薬と遅効性の催淫剤 が混入されていたのだ。
 催淫剤は場末の売春窟で扱われるような効能の怪しいものではなく、A国が国家プロジェクトとして膨大な資金を投入して開発したものである。開発には同国 の国立医薬研究所があたったが、この研究所は第二次大戦中ナチスドイツの絶滅収容所で若くして悪魔的な腕を振るい、戦後A国に亡命してきた天才女性医学 者、クララ・シュミットが実質的に指揮をとっていると噂されていた。
 クララが数限りないユダヤ人やパルチザンの女性を実験台にして開発したその催淫剤「イゾルテα」は、効果は劇的でかつ副作用はほとんど見られない。本来 は優秀なアーリア民族の繁殖を目的に開発されたこの薬は、A国の第3刑務所に併設された国立の医薬研究所で更なる改良が行われた。
 その結果、完成度を増した「イゾルテα」は、A国の支配者層が日々の淫楽に浸り、また反対者を堕落させるために使われると共に、麻薬生産と並んでA国の 裏の国家的産業ともいえる売春の振興に大きく寄与していた。その「イゾルテα」が涼子と美歩に対し、その体重の違いによる薬効の差も十分計算しながら巧妙 に投与されていたのだ。
 涼子は美歩のポーチに麻薬が隠されていたのは、例のスチュワーデスがたまたま手近な隠し場所として選んだためであり、最終的には空港を出た途端に彼女の 仲間が美歩からポーチを無理やりひったくるなりして麻薬を回収することを考えていたのではないか、と想像していた。
 国営航空のスチュワーデスが麻薬取引に手を染めるなど衝撃的なことではあるが、商社勤務経験もあり、また夫の啓治からA国の麻薬取引事情については手紙 で随分聞かされていた涼子にとってはその程度の想像を働かせるのはさほど困難なことではなかった。
 しかし、現実は涼子の想像をはるかに超えていた。これらの薬の投与は、あらかじめ選定されたターゲットに対して行われるA国の国家レベルでの「女体狩 り」を目的としていたのだ。つまりはポーチに隠された麻薬というような直接的な罠と共に、A国を訪問する外国人女性をからめとるためのものだったのだ。
 A国人女性だけでは品揃えの変化に欠ける売春産業が新鮮な素材を調達するにあたって、A国の警察および司法機構が全面的に荷担していたのである。
「イゾルテα」の薬効はそれを摂取したものの消化器から吸収され、その血中濃度を徐々に高めていき、臨界点を超えたところで一気に表面に現れる。身体の芯 の部分から隅々まで広がっていく、かつて経験したことのない異様な感覚を涼子は意志の力によって必死で耐えていた。しかしながら先程来の全裸のままの局部 検査や、淫らな言葉を口にさせられ、しかもそれを愛する娘の美歩に教え込むことを強制させられるという異常な状況が、まるで触媒のように「イゾルテα」の 薬効を高めていった。涼子は徐々に淫薬の強力な力に打ち負かされようとしていた。
 全身が熱を持ったような感じ、また身体中に張りめぐらされた神経の一本一本の感覚が研ぎすまされていくような錯覚に、涼子は怯えたように首を振る。
(へ、変だわ。私、どうしたのかしら……)
 看護婦は涼子の背中に身を寄せると両手を前に回し、その形良く盛り上がった乳房を包み込み、持ち上げるようにする。
「あはあッ」
 乳房をほんの軽く愛撫されただけで、涼子は悲鳴のような喘ぎ声を上げた。
 それはまるで身体の表皮ではなく、その下に張り巡らされた神経を直接ぐいと掴まれたような感触だった。ただしそれは痛覚ではなく、性感を伝える神経を刺 激するものであったが……。
「随分と敏感なのね。お上品な奥様面をしているけど、本当はどうしようもない淫乱女ってことかしら?」
「い、嫌――」
 看護婦がゆっくりと涼子の乳房を揉み上げると、涼子はそこから電流が走るような感触を覚え、うろたえたように裸身を揺する。
「や、やめて下さいっ。お願いです――」
「お母様っ」
 美歩が目の前で看護婦によって淫らな責めを受けている母を見かねたように悲鳴を上げる。
「やめてっ、やめてくださいっ。お母様を虐めないでっ」
「虐めてなんかいないよ。お嬢ちゃん」
 看護婦によって乳房に執拗な責めを受け、すすり泣きを始めた涼子を満足そうに眺めていた医師は美歩の背後に立つと、そっと両手を幼い胸に回す。
「な、何をするのですかっ」
 淫らな笑みを浮かべた医師が、美歩のサクランボのような可憐な乳首をそっとつまみ上げると、美歩は怯えと驚きで甲高い声を上げる。
「ママの泣き声を聞いてごらん。虐められて辛そうな泣き声かい? 甘えるような響きが混じっているのがわからないかい?」
「そ、そんな……。嫌っ」
 美歩は14歳という年齢の割には決して早熟とはいえず、女性が肉体を愛撫されて快楽の泣き声を上げるということが信じられなかった。しかし、確かに涼子 は看護婦によって侮辱的な扱い(涼子の乳房を揉み上げる行為が美歩にはそう見えた)を受け屈辱に泣く声にどこか責め手に迎合するような甘えた響きが確かに 感じられた。