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7.身体検査(4)
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「ああ、お母様。み、美歩、恐いわ――」
「み、美歩ちゃん。大丈夫よ。お母様がついているわ」
思春期を迎えて以降の美歩にとって、家族以外の人間の前で裸になる経験は始めてである。ましてそれがこのように日本を遠く離れた異国で、身に覚えのない
麻薬密輸入という容疑で素裸での身体検査を受けることになるなど想像さえしなかったことである。美歩はあまりの恐ろしさと激しい羞恥に、伸びやかな肢体を
小刻みに慄わせる。
「それでは、検査を始める――」
医師は悦びを抑えきれないといった声でそう宣言すると、再び薄いビニールの手袋をはめる。さすがにいきなり素手で美歩の身体を調べないのは、ヘロインを
身体の中に隠していないということが完全には証明されていないため、一応の検査の手順に沿ったということだろう。万が一「証拠物件」が美歩から発見された
場合に医師の指紋がそれに付着していたら、医師は厳罰を受けることとなるのだ。
「両手で、膣口部を大きく開きなさい――」
看護婦にそう命じられた美歩は意味が分からずおどおどと涼子を見上げる。美歩のスペイン語のレベルでは看護婦の使う医学的な表現が分からないのだ。
「娘に通じるように翻訳するのよ――」
看護婦の言葉に涼子は一瞬悲痛な表情を浮かべるが、諦めたように小さく口を開く。
「――み、美歩ちゃん。お母様のいうことを聞いて頂戴」
「は、はい――お母様」
「わ、私たちはこの国に無断で麻薬を運んできたんではないかと疑われているの。麻薬は人の身体や心を蝕む恐ろしいお薬で、他の国にとっても麻薬の密輸入は
重い罪に問われるわ。A国の法律は特に麻薬に対して厳しい立場をとっているのよ」
「――わ、わかります。それは知っていますわ」
美歩はこっくりと頷く。肩先まで伸びた美しい黒髪がいまだ幼さを残した美歩の額にはらりと垂れかかった。
「な、なぜか美歩ちゃんのポーチに麻薬が入っていたことで、私たち2人は麻薬の密輸入にかかわったのではないかという疑いを受けているの」
「そ、それは誤解ですわっ。み、美歩は全然知りませんっ」
「――わかっているわ」
涼子は美歩の興奮を鎮めるようにいったん言葉を切った。
「この人達の誤解を解くために、私たちがそんな恐ろしい罪にかかわっていないことを証明しなければならないの、わかるわね?」
「は、はい。でも……証明って、どうしたら良いんですか?」
「――まず、身体の中に何も隠していないこと。それから証明する必要があるの」
「で、でも私たち、こうやって洋服を全部脱いで、裸になっていますわ。これ以上は何も隠すことは出来ませんっ」
美歩は母親に抗議するようにいった。
「美歩ちゃん……」
涼子は悲痛な表情で医師と看護婦の方を眺めた。看護婦は相変わらず無表情な顔つきにわずかに薄笑いを浮かべ、医師はニヤニヤ笑いながら美しい日本人母娘
のやりとりを見守っている。
(私たちの苦悩を楽しんでいる。たとえ日本語が分からなくても、どんなことをいっているかはある程度、雰囲気で分かるんだわ――)
(14歳の少女が羞恥と屈辱に苦しむのを見て楽しむなんて――こんな悪魔のような連中の前で情けない姿を晒すわけにはいかないわっ――私がしっかりして、
美歩を守らなければ――)
私も美歩も麻薬を隠し持っていないこと、そして血液検査か何かで麻薬使用の反応が見られないことがわかれば、きっと解放されるはずだ。
(もじもじしていると、この悪魔のような連中を楽しませるだけよ)
「ずいぶん長い翻訳ね、早くしなさいっ」
涼子の沈黙に苛立った看護婦の叱咤に、涼子は覚悟を決めたように再び顔を美歩の方に向ける。
「――美歩ちゃん、聞いてくれる?」
「はい、お母様」
「美歩ちゃんは、お母様の身体の中から生まれたでしょう?」
「――はい……」
一体母は急に何を言い出すのか、美歩は怪訝な表情で涼子を見つめる。
「生まれる前の美歩はお母様のお腹の中にいた――女の人の身体は男の人と違って3000グラム以上の赤ちゃんや、赤ちゃんを守る胎盤や羊水などを貯えるこ
とが出来るの――つまり、女の人は身体の中に色々なものを隠すことが出来るということなのよ」
美歩はようやく母のいう意味が分かり、激しい羞恥に白い頬をかっと赤く染めた。
「で、でも、それはっ――」
「そう、美歩ちゃんにはできないわ。美歩ちゃんは男の方と――その――経験がないから――」
涼子も自分の言葉の恥ずかしさに、さすがに頬を染めて口ごもる。
「だけど、そのことを証明しないと駄目なの――その、美歩ちゃんが、しょ、処女であることを」
涼子はそこまでいうと嗚咽がこみ上げ、言葉を詰まらせる。
「お願い、美歩ちゃん。両手でその、その部分の入り口をしっかりと開いて頂戴――お医者さまがよく調べることが出来るように――」
「え、ええっ?」
美歩は愕然とした表情で涼子を見つめる。
「ど、どうしてそんなことをしなければならないのっ、お母様」
「――美歩ちゃん」
涼子は進退窮まったような声を上げた。
「お願い、お母様の言うとおりにして。それでないと――」
「どうやらそこまでのようね」
看護婦が涼子の言葉を遮った。
「これからはこちらが引き取るから、あんたは外へ出て良いわよ」
「――そ、そんなっ。お願いですっ」
涼子は悲痛な表情で看護婦に哀願する。
「美歩を一人にさせたくありませんっ、ど、どうかっ」
「駄目よっ。もうこれ以上待てないわっ」
「ご、後生ですっ。お願いっ」
「そんなにいうなら、早く娘に言うことを聞かせるのよ。母親自らお手本を見せてね――」
「ああ、そんなっ――」
涼子は目を閉じて切羽詰まったような呻き声を上げると、思い詰めたような表情になり「わ、わかりました」と、再び美歩の方を向く。
「み、美歩ちゃん。お母様がこれからお、お手本を示すから、あなたもその通りにして頂戴。お願い――」
涼子はむっちりと脂肪が乗った太腿の付け値に両手を当てると、まるで輪ゴムを拡げるように、女の羞恥の部分の入り口をぐっと開いていく。涼子のいかにも
人妻らしい、やや色の濃い鮭肉色の肉襞が美歩の目にはっきりと映じた。
「嫌あっ!」
母親のそんな破廉恥な姿を目にして激しい衝撃を受けた美歩は、甲高い悲鳴を上げ、顔をのけぞらせる。
「や、やめてっ。お母様っ! そんなことしないでっ」
「美歩ちゃん、わかって――仕方がないことなの。これは検査のため――恥ずかしいことじゃないのよ」
涼子は哀しみで声を慄わせつつも、美歩の顔をしっかりと見つめながら語りかける。
思春期を迎えた美歩は、通常なら母親に一種の疎ましさを感じる年齢だが、涼子に対しては小さな子供の頃と変わらぬ肉親としての親愛の情と、知的で優美な
女性という自分にとって理想の人間像を見るような憧憬の思いをずっと抱いてきた。美歩にとって涼子は最愛の人であるとともに、いわばアイドルのようなもの
でもあったのだ。
しかし、その母親が今、強制されたとはいえ素裸で大きく腿を割ったあられもない姿で自分の前に立ち、女の最も恥ずかしい箇所をこれ見よがしにさらけ出し
ている。美歩は涼子のあまりにも生々しい女の部分を目にして、美しい母親に抱いていた幻影が無残に打ち砕かれるのを感じた。
「嫌、嫌よっ。そ、そんなことをするお母様なんて、美歩のお母様じゃないわっ」
「いい加減にしなさいっ! 美歩っ」
涼子が優しげな表情を一変させ、きりっとした表情で一喝すると、美歩はびっくりしたような顔で涼子を見つめる。涼子のやや前に突き出された腰部は小刻み
に震え、こんもりと小判形に盛り上がった漆黒の繊毛も、憤辱の思いを伝えるようにフルフルとそよいでいるようだ。
母が自分に対して声を荒げたことなどいつ以来だろう。幼い頃、父が大事にしていた年代物のナイフを持ち出してままごとをしたときからだろうか。あの時も
母は、高級なナイフを汚したり傷を付けたりすることではなく、美歩が怪我をすることを心底から恐れ、驚くような恐い顔をして美歩を叱った。
美歩はそんな幼い日の記憶を呼び戻され、澄んだ黒い目を見開いて涼子をじっと見つめた。
「お願い――お母様の真似をして頂戴。美歩が言うことを聞いてくれないとお母様はこの部屋から出されてしまうの」
涼子はかすれたような低い声で美歩に語りかける。
「そうしたら、お母様はもう、美歩を守ってあげることが出来ないわ――お願い、わかって。お母様の言うことを聞いて」
「――わ、わかりました」
美歩はすすり泣きながら頷く。
「わ、我侭言ってごめんなさい。美歩、お母様の言うとおりにしますわ」
美歩は覚悟を決めたように、涼子と同じように股間に両手を当てると、その狭量な幼い女の箇所を徐々開いていった。
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