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6.身体検査(3)
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「……次に、――ああ――看護婦さん」
「何?」
「美歩は、美歩は検査の必要はありません」
「どうしてそんなことがいえるの? 穴の大小はあっても隠し場所があることは母親も娘も代わらない筈よ」
看護婦の言い方がおかしかったのか、ニヤニヤいやらしい笑みを浮かべて母娘の裸身を見比べていた医師がぷっと噴き出した。
「おまけにこの娘が主犯でしょ?」
「主犯だなんて……そんな……」
「無実を言い立てたいのならなおさら検査に協力することね。邪魔するなら検査室から出てもらうわよ」
「そ、そんな……」
涼子の表情がひきつった。
「……検査の必要がないといったのは、み、美歩の身体では麻薬を隠したりすることが不可能だからです」
「だから、どうしてって聞いているでしょ」
医師は相変わらず笑みを浮かべながら、成りゆきを見守っている。恥ずかしいこと、屈辱的なことをことさら、この品のいい日本人美女にいわせようという看
護婦一流のサディズムであった。
「……み、美歩は処女です」
「処女ですって?」
看護婦はわざと大きな声で聞き返した。
涼子と美歩の頬がカッと熱くなり、白い裸身が薄いピンクにみるみる染まっていくのを、医師は陶然とした表情で眺めている。
「本当に処女なの? 未婚だからといって処女とは限らないわよ。欧米の退廃した文化の影響を受けた国では未婚女性の出産率が上昇していると聞いているわ」
「うちは……美歩は違いますっ」
涼子は顔を上げて眉をそびやかせて答えた。
「そう。身持ちの良い娘だということを言いたいわけね」
看護婦は薄い唇をほんの少し歪めた。
「先生……どうします」
「……ううむ」
決断を求められ、医師はキョロキョロと落ち着かなく目を動かしたが、やがて口を開いた。
「処女と言うことなら通常の検査を行うわけにはいくまい。検査中に処女膜を損傷でもしたらこちらが逆に傷害罪に問われることになる……」
医師の言葉に、涼子の表情がぱっと明るくなった。
「従って、膣内の触診による検査は見合わせることとしよう」
「あ、有り難うございます……」
訴えを認められ、涼子は思わず素っ裸の恥ずかしさも忘れ、身体を折って礼を言う。
これまでの扱いから、A国当局はことさらに被害者をおとしめて悦ぶ、理不尽かつ嗜虐性に満ちた集団であると思って暗澹としていたが、まったく理屈が通ら
ない相手というわけではないということに、僅かながら安堵の気持ちが湧いてきたのだ。
「かわって、処女膜の検査を行う。準備させてくれ」
「――えっ?」
涼子は一瞬耳を疑った。
「両足を足形の所まで開き、腰を大きく前に突き出すようにしなさい。早くするのよ」
「そ、そんな……どうして……」
「どうしてですって? 処女ということなら膣内検査は勘弁して上げるけど、処女だということを確認しないと私たちが職務怠慢に問われるわ。さあ、早くしな
さいっ」
涼子は医師達の陰湿なサディズムに愕然とした。一瞬、涼子の希望を受け入れて安堵させ、すぐその後に絶望へとたたき込むとは――。
サディストにとっての最大の楽しみは被虐者をこの落差の間で精神的に翻弄し、肉体をのたうたせることだ。高貴と卑賎、快楽と苦痛、安堵と絶望、そして清
純と淫奔――。
「母親が見本を見せるのよっ。あなたはそのためにここにいるのでしょう。逆らうとここから追い出し、その代わりもう一度あの2人の警備員を呼んで、無理や
り押さえつけて検査するわよっ」
「そ、そんな――それだけは」
涼子は慌てて美歩を立たせた。
「向かい合わせにさせた方が面白いな」
「わかりました」
看護婦はチョークを先に付けた棒を取り出すと、既に描かれている足形に対して垂直に、2対の足形を手早く床に描いた。2対の足形は向かい合わせで、互い
の距離は3m程離れている。
「ここにお互い向かい合って立ちなさい」
なんと残酷な趣向だろう。母娘の裸身を向き合わせ、互いに羞恥の極みともいうべき姿を見せ合わねばならないとは――。母娘は互いの恥ずかしい姿を、鏡に
映った己の姿のように意識し合わなければならないと共に、母は娘の、娘は母の悲惨を共有することになる。
これは明らかに被疑者に対する人権侵害だ。しかし、そう抗議すれば自分は検査室から追い出され、美歩は自分の目の届かないところで恐怖と屈辱に喘ぐこと
となる。涼子は正に進退窮まった。
(あ、あなた――祥子――お、お願い、美歩と私を助けて)
涼子は夫の啓治と同時に、日本にいる妹の祥子に心の中で呼びかけた。
久我祥子は涼子よりも4歳下で、人権派として知られる新進の弁護士である。東京大学在学中に司法試験に合格、大学卒業後早くに家庭に入った涼子と違っ
て、ずっと仕事一途の生活を送っている。
勝ち気な祥子は柔和な性格の姉とは生き方も正反対ではあるが、涼子に比べやや硬質な印象は受けるものの、涼子同様人目を引く美貌を有している。自分が家
庭を持っていないせいか、姪の美歩には細やかな愛情を注ぐ一面もあり、美歩にとっても「祥子お姉さま」は憧れの的であった。
涼子と美歩にとって頼もしい存在である祥子はしかし、今は日本におり姉と姪の危難をすぐには知ることが出来ない。
「早くしないかっ」
(しかたがないわ。美歩は私が守るしかない――)
看護婦が声を荒げたのをきっかけに涼子は一方の足形に自分の足を揃えた、開脚の姿勢で立つ。
全裸の涼子があられもない仁王立ちの姿を美歩の前に晒した。涼子自身の身体検査は終わっているのだから、下着を付けたいといえば許可されるかも知れな
かった。しかし涼子は年端もいかない美歩が、いかにも好色そうな笑みを浮かべている医師や、冷酷な看護婦の前でひとりだけで全裸を晒させるわけにはいかな
かったのだ。
「さ、美歩ちゃん。お母様と同じ格好をして――」
「で、でも――そんな」
「た、ためらっちゃあ駄目よ、かえって辛くなるだけだわ。さあ――」
しかし美歩はさすがになかなか覚悟がつかず、おろおろとするばかりである。
「美歩ちゃん、お母様と一緒にお風呂に入っていると思って――お願い」
美歩は中学2年になった今でも涼子と一緒に風呂にはいることがあった。もうそんな年ではないと照れる美歩だったが、涼子は母娘のスキンシップを大事にし
たいからと、月に1、2度共に入浴することを主張した。
いつも最初は恥ずかしさに入浴を拒んでいる美歩だが、浴室の中で母親の年齢を感じさせない、輝くような白い裸身が湯気に煙るのを見ると、不思議なほど陶
然とした気持ちになるのがしばしばだった。
その涼子の裸身が美歩の眼前に晒されている。麻薬密輸入容疑による取調という異常な状況の下、医師と看護婦が見守る中で両肢を大きく開いた姿を娘に見せ
なければならない辛さ――。さらに涼子はその辛さを娘に強いなければならないのだ。
美歩にそんな母の辛い心情が痛いほどしみわたってきた。
「わ、わかりました。お母様」
美歩はきっと顔を上げると、涼子が立つ位置に向かい合ったもう一対の足形に両足を置こうと、透き通るように白い両腿を割った。
「おおっ」
見守る医師が小さな歓声を上げた。ついに美しい日本人母娘が向かい合って大胆に両肢を割り、一糸まとわぬ裸身を晒し合ったのである。思わず医師は椅子か
ら立ち上がり、全裸の母娘の間に歩み寄るとよだれをこぼさんばかりの顔つきで、全裸の母娘を交互に眺める。
母親の涼子は37歳という年齢を感じさせない美しく均整のとれた身体つきをしている。乳房はさほど大きくはないがこんもりとお椀形に盛り上がっており、
たるみは見られない。腹部は適度に脂肪が乗って熟女らしさを見せ、やや大きめの双臀はツンと上向き加減である。滑らかな内腿とスラリと伸びた両肢は、日本
人離れしたプロポーションを現している。
一方、娘の美歩は胸の膨らみもほんのわずかであり未だ幼い身体つきといえるが、しなやかに伸びたその肢体は母親の遺伝子が確実にこの美少女の肉体に受け
継がれていることを示している。妖精のような中性的な身体付きは見るものに対し妖しいまでの魅力を感じさせる。
その成熟度合いの明らかな差はあるものの、確かに母娘としての証拠を雄弁なまでに披露している涼子と美歩の肉体だったが、明らかに違いを見せているのは
その最も女らしい箇所だった。
涼子のその部分は艶やかな漆黒の繊毛に覆われ、周囲の雪肌に対して鮮やかなまでのコントラストを見せている。反面、美歩のそれはまだ産毛といった方が良
いような淡い繊毛から、くっきりとした亀裂が透けて見えているのだ。
医師はそんな母娘の女の箇所に好色な視線を向けながら、実に幸福そうな笑みを再び浮かべるのだ。
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