耽美画報
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地獄の美囚 

5.身体検査(2)


隣の部屋で下着姿のまま直立の姿勢で待機して いる美歩の耳に、母の絹を裂くような絶叫が厚い扉越しに聞こえてきた。
「お母様っ!」
 思わず美歩も声を上げる。
「騒ぐんじゃないよっ」
 取調官の女が手に持った警棒で、威嚇するように机を叩いた。
 美歩はひるまず、女にくってかかる。
「母にいったい何をしているんですかっ。ひどいことはしないで下さいっ。それと、早く父と連絡を取らせて……」
「ふん、随分スペイン語が達者じゃないか。ヤクの取引の必要性に迫られてお勉強したのかい?」
「な、なんのことですか。ヤクってどういう意味です?」
「しらばっくれるんじゃないよっ。おまえのポーチから出てきたヘロインのことだよ」
「知りませんっ。そんなものが入っていたなんてっ。何かの間違い……だ、誰かが間違って私のポーチに入れたんですっ」
「ふん、取調は身体検査の後と規則で決まっているんだ。言い分はその時にゆっくり聞いてやるよっ。おまえも母親同様、ケツの穴までほじくり返されるのを楽 しみに待っていなっ」
 美歩の身体が瘧にかかったようにブルブル震え出すと、ふっと全身から力が抜け、糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。

「あっ、うう――あああっ」
 医師が節くれだった人差し指を根元まで涼子の狭量なアヌスに差し入れ、こねくり回している。医師の指が柔らかい腸壁をえぐるたび、涼子の口から獣のよう な苦痛の呻きが聞こえる。
 前の部分を検査されているときは、涼子は次室で控えている娘がいたずらな恐怖心を持たないよう、声を抑えるだけの余裕があった。しかし、夫にも触れられ たことがないその隠微な箇所を、思うさまなぶられるにいたっては、もはや耐えることが出来なかった。幸いと言うべきか、隣の部屋の美歩は恐怖と緊張のあま り失神しており、母親の苦痛の呻きをそれ以上聞くことがなかったが――。
「ああっ、もうっ――」
 涼子がうなじをのけぞらせて哀願するような声を上げる。これまでのところ娘の美歩を守ろうと、気丈に振る舞ってきた涼子だったが、執拗な肛門責めにその 気力は限界に達していた。
 医師がようやく指を抜くと、看護婦から渡された脱脂綿で消毒する。涼子は四つん這いの姿勢から身体を起こし、ハアッ、ハアッと荒い息をついている。
「どうやらこの奥さんの身体の中にはヘロインはないようだ。するとやはり、娘の方かな――」
 涼子がはっとして振り向く。うなじに汗で張り付いた後れ毛、上気した頬、羞恥や怒り、困惑が入り交じった表情はぞっとするような美しさである。
「み、美歩もヘロインなんか持っていませんっ。私達は無実ですっ」
「それなら検査に協力することね」
 看護婦が相変わらず無表情のまま涼子に言った。
「これから娘を検査室に入れるから、娘が検査に協力するように、母親の方から良く言って聞かせるのよ。いいわね?」
「ど、どういうことです?」
 涼子は当惑したような顔で看護婦を見る。
「私達に協力することを約束するなら、娘の検査に立ち会わせて上げるわ。約束できないのなら貴方は彼女の検査が終わるまで、外で待っているのよ。可愛い娘 の悲鳴を聞きながらね――」
 医師がにやにやしながら涼子の返答を待っている。
(この人達は………)
 サディスト、というおぞましい言葉が涼子の脳裏に閃いた。
 脂ぎった中年の白人男といった印象の医師は単なる好色漢かもしれない。しかし、仮面のような無表情さを保っている看護婦の目にときたま浮かぶ妖しい光 は、涼子に底知れない恐怖を感じさせた。
「わ、わかりました……」
 涼子は頷いた。
 ここで自分が部屋を出れば、美歩に何をされるか分からない。なんとか傍らについていることで、娘を最大限守らなければ――。
(あなた、啓治さん。私、例え自分がどんな目に遭おうとも美歩を守ってみせるわ――でも、早くして――私、恐いの)
 涼子が祈るような思いで啓治に呼びかけたとき看護婦が扉を開け、次室に声をかけた。
「オーケー、娘の方を連れてきて」
 扉が大きく開かれ、取調官の女が現れた。女の後ろには2人の男の警備員の姿も見える。
「きゃっ」
 涼子は思わず身を縮め、両手で身体を隠す。
「あら、失礼。まだ裸だったのね」
「お、男の方を入れないで下さいっ」
 涼子は屈強な警備員の男に全裸の肉体を見下ろされると、激烈な羞恥と共に、今にもこの場でレイプされるのではないか、といった恐怖心がつのってくるのを 感じるのだ。
「仕様がないじゃない。貴方の娘さんが一人では入って来られない状態なんだから――」
 よく見ると警備員の男の一人は、背中に下着姿の美歩を背負っている。美歩は気を失っているようでぐったりとしているが、見知らぬ異国の男の背中に身体を 預けた姿は、涼子にはまるで父親に背負われた子供のように無垢で無力なものに見えた。
「……み、美歩っ」
 驚きの声を上げる涼子の目にたちまち涙がこみ上げる。涼子は丸裸であることも忘れ、気を失っている娘に駆け寄るが、警備員の男に軽く突き飛ばされ、その 場にしたたかに尻餅をつく。
「あうっ」
 床でしたたかに尾てい骨を打ち、涼子は激しい苦痛に呻き声を上げる。それを取調官の女は口元に薄笑いを浮かべながら眺めている。
 下着姿の美歩を背負った警備員は幼さが残る肉体を下ろすと、活を入れる。
「うっ」
 美歩は息を吹き返すと、ぼんやりとした目で周囲を見回す。
「――お、お母様っ!」
 母親の姿を認めた美歩は、涼子に駆け寄り、その身体にむしゃぶりつくようにしがみつく。
「お母様っ、美歩、こ、こわいわっ。わ、私たち、どうなるのっ」
「ああ、美歩ちゃん。大丈夫よ、お母様がついているわ。きっともうすぐお父様が助けに来てくれるわっ」
 素っ裸の母親と下着姿の娘、成熟した美女と清純な美少女が抱き合って悲嘆にくれる声は、検査室の好き者達にとって美しい音楽のように響いた。
「お、お母様、は、裸にされたのね?」
 母親が一糸まとわぬ素っ裸のままであることに始めて気づいた美歩の目に、新たな涙が湧き上がる。
「み、美歩も裸にされるのっ?」
 震える声で美歩が涼子に尋ねると、涼子は悲しげにこっくりと頷く。
「――お、お父様が助けに来てくれるまでの辛抱よ。我慢して――美歩ちゃん」
「酷いことをされたの? ねえ、お母様――」
「だ、大丈夫よ。貴方のことは必ずお母様が守ってみせるわ」
「ああ――お母様、ごめんなさいっ」
 美歩はわっと泣き伏し、涼子の形の良い胸に顔を埋める。
「お母様、つらい思いをしたんでしょう。ああ、お母様――」
「いいのよ、美歩ちゃん。泣かないで」
「美歩、自分のことばかりいって――ご、ごめんなさいっ。お母様っ」
 号泣する美歩の背中を優しく撫でさする涼子に、看護婦が声をかける。
「さあ、愁嘆場は終わりよ。検査を始めるわ」
 次に看護婦は警備員の方を向く。
「あんたたちも目の保養はもう十分でしょう」
 警備官の男2人は、名残惜しそうにちらちらと振り返りながら、取調官に先導されて部屋を出る。
「わかっているわね、娘を説得して、素直に検査を受けさせるのよ」
「わ、わかりました」
 看護婦に念を押された涼子は、美歩に向かって口を開く。
「――美歩ちゃん、いいわね、これからお母様の言うとおりにするのよ。そうしないとあなたは一人で検査を受けなければならなくなるのよ」
「お、お母様と離れるのは嫌よっ。美歩を一人にしないでっ」
「それじゃあ、これからお母様の言うことを聞いて、素直に検査を受けると約束できるかしら?」
「や、約束しますっ」
 瞳を潤ませて答える美歩に、涼子は心臓が締め付けられるような悲哀を感じる。これから愛する娘に、清純な少女にとって死んだ方がましといえるほどの羞恥 と屈辱に満ちた行為を強いなければならないのだ。
「じゃ、じゃあ美歩ちゃん。下着を取って、お母様と同じように裸になるのよ」
 美歩は涼子の言葉を聞くとブルッと身体を慄わせたが、母親の姿を見たときからさすがにそれは覚悟していたのか、震える手つきでブラジャーのホックを外 し、パンティを引き下ろす。
 遂に美貌の母と娘が揃って素っ裸を検査官の目に晒すこととなった。1時間前には予想もしなかった苛酷な運命が山野辺涼子とその娘、美歩を襲っているの だ。しかし、彼女たちにとってはこれも、この後たっぷり経験する生き地獄のほんの導入部に過ぎなかったのだ。